飲食店の発注業務を効率化|手書きをやめる手順
毎日の発注書を手書きしている飲食店向けに、発注業務を効率化する手順をまとめました。時間が消えている工程の見つけ方、段階的な進め方、よくある失敗と対策まで解説します。
営業が終わった深夜、冷蔵庫を開けて残りを数え、伝票の裏に発注数を書き出す。翌朝FAXを流し、電話で追加を伝える。飲食店の発注業務は、いちばん疲れている時間帯に、いちばん間違えやすい形で行われがちです。
この記事では、飲食店の発注業務を効率化する進め方を扱います。読み終えると、次の3つが分かります。
- 発注のどの工程で時間と精度が失われているか
- 手書きをやめるときに踏むべき3つの段階
- 効果を見積もる考え方と、よくある失敗の避け方
発注に時間がかかるのは「書く時間」ではない
発注書を書くこと自体は、慣れれば短時間で終わります。それでも発注全体では、思った以上に時間を取られがちです。時間はその前後で消えています。
- 数える時間:冷蔵庫と乾物棚を回り、残量を目視で確認する
- 思い出す時間:明日の予約人数と天気から、必要量を頭の中で計算する
- 探す時間:仕入れ先ごとに単価や最低ロットを確認する
- やり取りする時間:FAXの送信、電話での追加、届いた品の照合
つまり発注業務の負担は、記入作業ではなく判断の材料をそろえる作業にあります。ここを飛ばして発注書だけをデジタル化しても、深夜の作業時間はあまり変わりません。
もうひとつの問題が、属人化です。発注は「勘」で成り立っている部分が大きく、店長が不在の日に精度が落ちます。手順が頭の中にしかないため、引き継ぎもできません。
発注のムラは、在庫と実績が見えないことから生まれる
発注量を多めに見積もる癖は、欠品を避けるための合理的な判断です。ただし、それが積み重なると廃棄につながります。
農林水産省が2026年6月に公表した推計では、2024年度の事業系食品ロス量は237万トンで、うち外食産業が70万トンを占めています(出典:事業系食品ロス量(2024年度推計値)を公表|農林水産省)。外食産業は事業系全体の3割弱にあたります。
もちろん廃棄のすべてが発注のせいではありません。それでも、昨日どれだけ余ったかが数字で見えない状態では、発注量は経験則に寄ります。逆に言えば、在庫と出数が見えれば、発注のムラを減らす手がかりになります。
効率化の目的は、書く手間を減らすことだけではありません。判断の材料を毎日そろえて、誰が発注しても同じ結果になる状態をつくることです。
手書きをやめる3つの段階
一度に全部を変えると、忙しい日に元へ戻りがちです。次の順番で進めてください。
段階1:発注書をひな形にする
まず、いつも頼む品目を一覧にします。品名・規格・仕入れ先・単価・最低ロットを1行にまとめ、数量欄だけ空けておく。これだけで、毎回ゼロから書く作業がなくなります。
このとき、仕入れ先ごとにシートを分けないことが大切です。1枚の表に全品目を並べ、送信時に仕入れ先ごとに切り出す形にすると、あとの自動化が楽になります。
段階2:判断の材料を自動でそろえる
次に、発注の前に見る数字を自動で用意します。具体的には、前日の出数、現在の在庫、翌日の予約人数の3つです。
このうち出数はレジのデータから、予約人数は予約台帳から取り出せます。毎日決まった時刻に1枚のレポートとして届くようにしておくと、冷蔵庫を回る前に当たりがつきます。
在庫の管理をエクセルで続けるべきか迷う場合は、在庫管理のエクセルが限界かどうかの見極め方が判断の助けになります。
段階3:送信と記録を自動化する
最後に、確定した数量を仕入れ先ごとの発注書に自動で振り分け、メールやFAXで送るところまでつなぎます。同時に、送った内容を発注履歴として残します。
履歴が残ると、月末に「どの食材にいくら使ったか」を集計できます。原価管理の手作業も、ここで一緒に減ります。仕入れ側の考え方は仕入れ・発注を自動化するときの進め方にまとめています。
機械に任せる工程と、人が残す判断
発注は、すべてを機械に任せる業務ではありません。線引きを先に決めておきます。
機械に任せやすい工程
- 定番品の発注数量の提案(出数と在庫からの計算)
- 仕入れ先ごとの発注書の作成と送信
- 発注履歴の記録と、月次の原価集計
- 欠品しやすい品目のアラート
人が残すべき判断
- 天気やイベントを踏まえた増減の最終判断
- 旬の食材や相場を見ての切り替え
- 仕入れ先との交渉、品質のクレーム対応
- メニュー変更にともなう品目の見直し
基準は単純です。毎回同じ計算で答えが出るものは機械へ。相場や関係性が絡むものは人に残す。 この線引きなら、店の個性を保ったまま作業だけを削れます。
効果は「削れた時間 × 時給」で見積もります。たとえば発注に毎日40分かかり、半分減ったと仮定します。月30日なら約10時間です。参考までに、小売のお客さまの仕入れ業務で、月60時間の作業が月3時間になった例があります(約95%の削減)。業種も工程も違うため、同じ数字になるとは限りません。費用と納期の目安は料金と納期のご案内に掲載しています。
よくある失敗と対策
失敗1:品目リストを完璧に作ろうとする 全品目を洗い出そうとすると、着手前に力尽きます。対策は、発注金額の上位2割から始めること。金額の大きい品目から整えると、効果が見えやすくなります。
失敗2:仕入れ先の慣習を無視して切り替える FAXを急にやめると、注文が通らない事故が起きます。対策は、送信方法は仕入れ先に合わせたまま、手元の作成工程だけ先に変えることです。
失敗3:在庫の数え方が人によって違う 「1ケース」が人によって違えば、自動計算は成り立ちません。対策は、単位と数え方を紙1枚に決めて、冷蔵庫の扉に貼ること。ここが揃わないと、どんな仕組みも精度が出ません。
失敗4:効果を測らずに次の道具を入れる 比べる基準がないと、投資の判断ができません。対策は、着手前の1週間だけ発注にかかった時間と廃棄量を記録しておくことです。
まとめ
飲食店の発注業務を効率化するときの要点は、次のとおりです。
- 時間が消えているのは記入作業ではなく、数える・思い出す・照合する工程
- 発注書のひな形化、判断材料の自動化、送信の自動化を、この順で進める
- 定番品の計算は機械に任せ、相場や交渉の判断は人に残す
- 単位と数え方を先に統一しないと、仕組みは精度が出ない
- 着手前に時間と廃棄量を記録し、効果を比べられるようにしておく
まずは発注金額の上位2割の品目を書き出し、1枚のひな形にするところから始めてみてください。深夜の作業が短くなるだけでなく、店長以外でも発注できる状態に近づきます。
自社ではどこから手を付けるべきか、一緒に整理します。
相談は無料です。今の業務の流れを伺ったうえで、自動化する順番と、 自動化しないほうがよい部分をお伝えします。